【前夜式】
昨日、京都で友人の前夜式が行われ、私も出席させていただきました。そして依頼を受け、思い出を語るという形での時間をいただきました。京都に向かう新幹線の中で、ずっと彼にまつわる幾つかの思い出を考えていました。
彼は岩渕まことさんとミュージシャンの仲間たちによって毎月開催されている「歌声ペトラ」という集会に毎回参加してくれていた熱烈な
「歌声ペトラ」ファンでした。歌声ペトラでの楽曲はすべて私が歌詞を書き、岩渕まことさんが全曲曲をつけて発表している「日本生まれ
の賛美歌」を歌う会なのですが、彼はいつも一番前の席に座り、一番最初にリクエストの手を上げ、コーラスの練習では必ずテノールの音符全部を繰り返して確認し、いつもニコニコ握手を求め、「この間は、あそこの集会で歌声ペトラのあの曲を歌ってきました」「あの牧師さんに会った時、歌声ペトラのこの曲を紹介してきました」と、実に嬉しそうに、作者の私や岩渕さんよりも遥かに嬉しそうに曲の拡大を報告してくれました。まさに、歌声ペトラの拡張委員のように、曲を愛してくれました。実に無垢な人でした。純粋な子供の心を持っている人でした。43歳の若さで天に召されました。
彼の生き方とだぶって思い浮かぶ詩があるのです。宮沢賢治の「雨にも負けず」です。宮沢賢治は1896年に生まれ 37歳で亡くなっています。
「雨にも負けず」
雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ
丈夫なからだをもち 慾はなく 決して怒らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米四合と味噌と 少しの野菜を食べ
あらゆることを自分を勘定に入れずに、よく見聞きし分かり
そして忘れず
野原の松の林の陰の小さな萱ぶきの小屋にいて
東に病気の子供あれば 行って看病してやり
西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば 行ってこわがらなくても
いいといい
北に喧嘩や訴訟があれば つまらないからやめろといい
日照りの時は涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにでくのぼーと呼ばれ 褒められもせず
苦にもされず
そういうものに わたしはなりたい
++++
雨にも風にも負けずに歌声ペトラにやってきて、西や東のキリスト教の集まりにさっさとでかけ、大好きな歌声ペトラの歌を紹介したり、
歌ったり。しかも、それを実に楽しそうに、嬉しそうに分かち合ってくれました。社会的には苦労の多い、いじめの経験をたくさん受けて
きた人でもありました。でも、私達にとって、本当に「いてくれてうれしい人」でした。
私は彼が危篤だということを聞いた時、ちょうど岩渕さんから楽譜が届いていたので、彼ならこういうことを言い残したいのではないかな
ぁと考えつつ歌を書きました。187番目の曲です。
187 やがて御国で
与えられたいのちを 大切にしよう
愛のきずな心に 固く結んで
やがて御国で 主をほめる日まで
生かされてるこの日を 大切にしよう
共に生きる仲間と 心つないで
やがて御国で 主をほめる日まで
ご遺族の皆様の上に神様の慰めが豊かにありますようにと願いつつ前夜式の会場に向かいました。